

夫婦で協力して購入した場合、財産分与の対象になります。では、どのように財産分与すればいいかを見ていきましょう。
この記事では、離婚時の財産分与で車はどうすればいいのか、車を財産分与するときに注意すべき点などとあわせてご紹介します。
目次
離婚の財産分与で車はどうする?
財産分与は、婚姻中に夫婦で協力して築き上げた財産を2分の1の割合で分けることです。婚姻中に夫婦で協力して車を購入した場合、車の名義が夫または妻のいずれであっても財産分与の対象となるため、夫婦で均等に分け合う必要があります。
しかし、車は預貯金などと違い、物理的に2分の1に分けることはできません。では、車を財産分割するときはどうすればよいのかを解説します。
離婚時に車を財産分与する方法は以下の3つです。どの方法を選択するかは、夫婦で話し合って決めます。
- 売却して得たお金を分割する
- 一方が乗り続けて他方に代償金を支払う
- 一方が乗り続けて他方にほかの財産を渡す
それぞれの方法を詳しく解説していきます。
売却して得たお金を分割する
1つ目の方法は、所有している車を売却し、得たお金を夫婦で分ける方法です。財産分与の割合は原則2分の1とされているため、車の売却で得たお金は通常、均等に分けます。たとえば、車の売却価格が200万円であった場合、100万円ずつを受け取ることになります。

離婚後に夫または妻のどちらも車に乗る予定がない場合は、売却するのがよさそうですね。
一方が乗り続けて他方に代償金を支払う
2つ目の方法は、夫または妻のどちらかが車の所有者として乗り続け、他方に車の価値の半分を支払う方法です。
たとえば、車の査定額が200万円であった場合、夫が車に乗り続けるのであれば、妻に現金で100万円を支払うことで均等に財産分与できます。
一方が通勤などで車が必要な場合は、売却せずに乗り続けるのがよいでしょう。
一方が乗り続けて他方にほかの財産を渡す
車以外にも財産分与の対象となる財産があれば、その財産を他方に渡すという選択も可能です。
たとえば、車の査定額が200万円であった場合、車以外に預貯金が100万円あれば、夫が200万円の価値の車を乗り続け、妻に預貯金100万円を渡すことで公平に財産分与できます。

どちらかが乗り続ける場合は、他方が損しないようにお金やほかの財産を渡すことがポイントです。
財産分与ではまずは車を査定に出すべき理由
車を財産分与するためには、まず車の評価額を把握しなければ分配額も分からず、話し合いが進みません。車は年式や走行距離、状態によって価値が決まるため、購入時から少しずつ価値が低下していきます。そのため、離婚が決まった時点で早めに車を査定に出すことがポイントです。
このとき、どこで査定してもらうか迷う人もいるでしょう。査定場所の選択は、車の状態にあわせて選びましょう。車の状態が悪くなければ、ディーラーや中古車買取業者で査定してもらうのがおすすめです。
故障しているなど状態が悪い車の場合、ディーラーや中古車買取業者では値段がつかない可能性もあります。そのため、状態が悪い車は廃車買取業者に査定を依頼するのがおすすめです。廃車買取業者は状態が悪い車の買取を専門としているため、部品ごとに価値を判断して査定額を出してくれます。
査定に出すときは、1社ではなく複数社に査定してもらうことが大切です。複数社を比較することで、適切な価格を把握できるでしょう。売却する場合にも、より高額で売却できる可能性があります。
査定に出して車の価値を把握することで、財産分与の話し合いをスムーズに進められます。売却額が高額な場合、売却することでお互いに多くの現金を受け取れます。売却額に納得いかない場合は、乗り続けて価値の半分を相手に支払う方がよいとも考えられるでしょう。どの選択をするにしても、車の価値が分からなければ選択しにくいため、まずは査定に出しましょう。

離婚が決まったら、早めに車を査定に出すことがポイントですね。
車の財産分与でトラブルを避ける5つのやるべき事
離婚時に車の財産分与をする場合、相手と連絡が取れなくて話し合いが進まない、車の名義変更に必要な書類がなかなか揃えられないなど、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。このようなトラブルを避けるためにやるべきことは、以下の5つです。
- 離婚届を提出する前に決める
- 車の名義人を確認する
- 車の売却価格の査定をしておく
- 自動車ローンの残額を確認する
- 離婚協議書を作成する
離婚時の財産分与はお互いに精神的な負担となるため、トラブルを避けるためのポイントを押さえて、少しでも負担を和らげましょう。
①離婚届を提出する前に決める
財産分与についての取り決めは、離婚届を提出する前に行うことがポイントです。離婚後に財産分与を請求することも可能ですが、離婚成立時から2年以内に請求しなければならないという期限が設けられています。
離婚後は、引っ越しやさまざまな手続きなど、お互いに新たな人生のスタートの準備などで忙しくなります。そのようなタイミングで相手と連絡を取りながら財産分与の話し合いを進めるのは大きな負担になるでしょう。
忙しいからといって先延ばしにしてしまうと、請求期限を過ぎてしまい、どちらかが損してしまいます。また、離婚後は相手と連絡が取れなくなる、車の名義変更に必要な書類のやりとりに協力してもらえないなど、財産分与をスムーズに進めるのが難しくなる可能性もあります。
そのため、離婚届を提出する前に財産分与を済ませ、離婚成立後はお互いにすっきりとした気持ちで過ごしましょう。
②車の名義人を確認する
車を財産分与するときは、まず名義人を確認しましょう。名義人は車検証に記載されています。どちらかが乗り続ける場合、名義人が夫なのか妻なのかによって名義変更手続きの有無が決まります。
夫が名義人である車を妻が乗り続けることになった場合、名義変更が必要です。名義変更をするときには、旧名義人と新名義人双方の印鑑証明や車庫証明書などの書類が必要となります。
離婚後は相手と連絡が取りにくくなったり、苗字が変わったりなどの状況変化で手続きを進めにくくなる可能性もあるため、早めに対応しましょう。
手続きが面倒だからといって名義変更をせずに乗り続けた場合、車を売却したいと思ったときにできない、廃車にできない、事故を起こしたときに補償されないなどのトラブルにつながる可能性があるので注意しましょう。
また、ローンを組んで車を購入していた場合、名義人がディーラーやローン会社になっている可能性もあります。この場合、ディーラーやローン会社に対してローンを完済し、所有権留保を解除する手続きを行わなければなりません。

離婚後に慌てることがないよう、名義変更が必要な場合は早めに手続きを進めましょう。
③車の売却価格の査定をしておく
車の価値は、年式や走行距離によって購入時から少しずつ下がっていきます。車の売却価格によって財産分与の分配額が決まるため、査定に出して離婚時の車の価値を把握しましょう。
インターネットで中古車の取引相場を確認することも可能ですが、査定に出して車の状態などを実際に確認してもらう方が正確な売却価格を把握できます。
査定は1社だけでなく複数社にしてもらうことがポイントです。複数社に査定してもらうことで適切な価格を把握でき、お互い納得した状態で財産分与できるでしょう。また、売却する場合も高額で買い取ってくれる業者を見つけられるので複数社での査定をおすすめします。
④自動車ローンの残額を確認する
車を財産分与するときには、離婚時の自動車ローンの残額を確認することがポイントです。所有している車が財産分与の対象になるかは、車の評価額と自動車ローン残額を比較して判断します。
一般的に、車の査定額がローン残額を上回っている場合は財産分与の対象となり、車の査定額がローン残額を下回っている場合は財産分与の対象となりません。財産分与の対象となった車は夫婦で2分の1ずつ分ける必要がありますが、対象でない車は分ける必要がないためよく確認しましょう。
ローンの状況 | 財産分与 |
---|---|
車の査定額 > ローン残額 | 対象となる |
車の査定額 < ローン残額 | 対象とならない |

車を査定に出すときには、ローン残額も確認しておきましょう。
⑤離婚協議書を作成する
財産分与の話し合いで決定した内容は、離婚協議書を作成して書面に残しておきましょう。口約束のみで済ませてしまった場合、あとで認識違いや記憶違いによるトラブルが生じる可能性があります。
また、離婚協議書は公正証書にしておくこともポイントです。離婚協議書を作成しただけでは、相手が財産を渡さない場合に強制する力はありません。しかし、離婚協議書を強制執行認諾文言のある公正証書にしておけば、万が一相手が必要な金額を支払わなかったなどの不履行が発生したときに相手の財産を差し押さえられます。

もしもの場合に備えて離婚協議書は強制執行認諾文言のある公正証書にしておきましょう。
ローンが残っている車はどうやって財産分与するの?
車を購入するとき、自動車ローンを組んで購入する人も多いでしょう。そのため、ローンが残っている車を財産分与することになる場合もあります。
ローンが残っている車の場合、車の査定額とローン残額を比較して財産分与の方法を決めます。
車の査定額がローン残額を上回っている場合
車の査定額がローン残額を上回っている場合、財産分与の方法はあまり複雑ではありません。車の査定額からローン残額を差し引いた額を財産分与します。
たとえば、車の査定額が200万円、ローン残額が80万円の場合、200万円-80万円=120万円となり、財産分与は60万円ずつとなります。車を売却せずに夫または妻のどちらかが乗り続ける場合は、他方に60万円を支払うことで公平に分けられます。
車の査定額がローン残額を下回っている場合
車の査定額がローン残額を下回っている場合、通常、財産分与の対象とはなりません。たとえば、車の査定額が50万円、ローン残額が80万円の場合、50万円-80万円=-30万円となり、ローン残額が30万円残るため、車は財産とみなされません。
しかし、ローンの残額を誰がどの程度負担するのかを話し合わなければなりません。ローン残額の負担方法を3つご紹介します。
1つ目の方法は、車を売却して残ったローン残額を2人で公平に負担する方法です。たとえば、車の査定額が50万円、ローン残額が80万円の場合、50万円-80万円=-30万円となり、ローン残額は30万円残ります。この30万円を夫と妻でそれぞれ15万円ずつ負担します。
2つ目の方法は、車を乗り続ける側がローン残額も負担する方法です。この場合、車を財産分与の対象とは考えず、2分の1に分けるという考え方はしません。車の所有権もローンの残額も一方が負担し、他方は関与しないという方法です。
ただし、ローン契約者と車の名義人は同一でなければならないとされています。名義人が変わる場合、名義変更やローンの借り換えが必要となるため、手続きが複雑になります。また、ローンが残っている状態では名義変更ができないローンもあるため注意が必要です。
3つ目の方法は、車を売却せず、財産分与に含む方法です。たとえば、共有財産が430万円、車の査定額が50万円、ローン残額が80万円の場合、車の査定額50万円からローン残額80万円を引いたローン残額30万円を共有財産から差し引きます。そして、残った400万円を財産分与で200万円ずつ均等に分ける方法です。
別居した後に買った車はどうなる?
財産分与の対象となる財産を判断するうえで重要なのは「夫婦で協力して築いた財産であるか」という点です。
すべての財産において、この夫婦での協力の有無を確認します。別居後に買った車は、どのような資金をもとに購入したかがポイントになります。
たとえば、別居後に夫が個人的に稼いだお金で車を購入した場合、夫婦で協力して購入したわけではないため、財産分与の対象にはなりません。同居中は、夫が個人的に稼いだお金で購入した車であっても、夫が稼ぐために家事などを負担して貢献した可能性があるため、財産分与の対象となります。
また、別居後も家計を同一にしていた場合や別居前に築いた夫婦での貯金をもとにどちらかが車を購入した場合も財産分与の対象となります。
別居後に購入した車であっても財産分与の対象となった場合は、2分の1の割合で分ける必要があります。財産分与の対象とならない車は分ける必要はありません。
財産分与の対象となる | 財産分与の対象とならない |
---|---|
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まとめ
夫婦で協力して購入した車の場合、離婚時に財産分与の対象となります。財産分与の方法には、車を売却して得たお金を2人で分割する方法や、どちらかが乗り続けて他方に車の価値の半分を渡す方法があります。
どの方法を選択する場合も、まずは車の価値を査定して確認することがポイントです。車の価値を把握したうえで車をどうするか話し合いましょう。ローンが残っている場合、ローン残額によって財産分与の対象となるかが決まります。
離婚後にトラブルにならないようにしっかり話し合い、お互いすっきりとした気持ちで新しい人生に進みましょう。
車は離婚時に財産分与の対象になりますか?