

名義変更手続きには多くの書類が必要なので、いざという時に慌てないようにやり方や必要書類を把握しておきましょう。
この記事では、車の持ち主が死亡したときの名義変更の手順や必要書類、注意点など解説します。
目次
車の持ち主が死亡したときにやること
車の持ち主が死亡したときは、車の名義変更が必要です。車の名義は持ち主が死亡したとしても自動的に変更されるわけではないため、遺族が名義変更の手続きをしなければなりません。
車の持ち主が死亡したときの名義変更に法律上の義務はなく、いつまでに名義変更しなければならないなどの期限も設けられていません。しかし、車の売却や廃車は名義人が行う必要があるため、名義変更をしなければ車の売却や廃車の手続きができません。
また、名義変更をしないまま車に乗っていて事故を起こしてしまうと、自賠責保険以上の補償を受けられない可能性もあります。名義変更には7~10日ほどかかるため、早めに手続きしましょう。
名義変更をするときには、まず車の名義人を確認しましょう。名義人は車検証の所有者欄に記載されています。故人がよく乗っていた車であっても、必ずしも故人が名義人とは限りません。リース車であればリース会社、ローンの支払いが残っていればディーラーやローン会社が名義人となっている可能性があります。
名義人が故人であった場合、必要な書類を用意することで名義変更はスムーズに行えます。しかし、ローン会社やディーラーの名前が記載されているときは、注意が必要です。
ローン会社やディーラーは、車の所有権を持つことで車をローン返済の担保としています。ローン会社が所有権を持っていれば、ローンの返済が滞ったときに車を引き上げられるからです。そのため、ローンが残っている場合、原則名義変更はできないとされています。
名義を変更して乗り続けたり、車を売却したりするためにはローンを一括返済しなければなりません。ローンによっては契約を引き継げる場合もありますが、審査を通過する必要があります。
車に乗る予定がない人は、車をローン会社などに返却することでローン残額を相殺できます。どのような方法を選択するかは、ローン会社に相談して決めましょう。

名義変更をするためにはローンを完済しなければならないのですね。
車の持ち主が死亡したときの名義変更の手順
車の持ち主が死亡したときの名義変更の手順は次のとおりです。
- 手続きに必要な書類を準備する
- 運輸支局に提出する
- 新しい車検証を受け取る
- 自動車税などの申告をする
1つずつ解説していきます。
①手続きに必要な書類を準備する
車の名義変更をするときには、複数の書類が必要となります。まず、申請する日よりも前に運輸支局で申請書を入手しましょう。申請書は運輸支局で当日記入することもできますが、記載内容も多いため、持ち帰って自宅で落ち着いて書く方が記載ミスを防げるでしょう。
このとき、手続きに必要な書類や手続きするうえでの疑問点を直接確認しておくことで、手続きの当日の書類不備を防止でき、スムーズに手続きできます。
また、車の保管場所が変わるときには新しい車庫証明を用意する必要があります。車庫証明は車を保管する地域の警察署で発行してもらえます。車庫証明の発行には3~7日程度かかるため、名義変更をすることになったタイミングで早めに申請しておきましょう。

名義変更に必要な書類は1人が相続する場合、相続人が共有で相続する場合などパターンごとに異なるため、あとで詳しく解説します。
②運輸支局に提出する
手続きに必要な書類が準備できたら、運輸支局に提出しましょう。このとき提出に行く運輸支局は、故人が車を保管していた地域ではなく、新たな所有者が車を保管する地域の運輸局なので、注意しましょう。また、軽自動車の場合は、運輸支局ではなく軽自動車検査協会に提出します。
運輸支局および軽自動車検査協会の営業時間は通常、平日の8時45分~11時45分と、13時から16時です。土日や祝日、年末年始は休業しているため注意しましょう。
提出に行くときには、提出書類のほかに新たな所有者の実印も必要です。また、印紙代やナンバープレート代、自動車取得税など当日支払わなければならない費用もあるため、事前に確認したうえで用意していきましょう。
提出時に必要なもの |
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③新しい車検証を受け取る
運輸支局に提出した書類に不備がなく、名義変更手続きが完了すると新しい車検証が発行されます。車検証が発行されるまでに1時間以上かかる場合もあるため、手続きをするときには時間に余裕をもって行きましょう。
新しい車検証を受け取ったときには記載内容に間違いがないかを確認し、車のダッシュボードなど紛失しない場所に保管しましょう。
④自動車税などの申告をする
新しい車検証を入手したら、自動車税の申告をしましょう。運輸支局内にある自動車税事務所の窓口に新しい車検証と「自動車税・自動車取得税申告書」を提出します。このとき、自動車取得税が計算されるため、納税が必要な場合は支払いましょう。
使用地域などの変更に伴いナンバープレートを変える必要がある場合は、運輸支局内の返納窓口に古いナンバープレートを返納し、交付窓口で新しいナンバープレートを購入します。
窓口にはナンバープレートを取り付けるための工具が用意されているため、新しいナンバープレートをその場でつけ替えましょう。
単独相続に必要となる書類とは?
相続には、1人で相続する場合や複数の相続人が共同で相続する場合など、さまざまな相続方法があります。名義変更に必要な書類も相続方法によって異なります。
遺言などで相続人が指定されている場合は、1人で相続する単独相続となります。単独相続に必要な書類は次のとおりです。
単独相続に必要な書類 |
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新たに車の所有者となる相続人本人が名義変更手続きを行う場合、必要な書類は上記のみです。ただし、親族やディーラーに手続きを代行してもらう場合は、本人の実印が押された委任状が必要となるため注意しましょう。
なお、車の査定額が100万円未満の場合は、上記の必要書類のうち「遺産分割協議書」と「相続人全員の記載がある戸籍謄本」が不要となります。その代わり、以下の3つの書類が必要です。
不要書類 | 代わりに必要な書類 | |
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車の査定額が 100万円未満の場合 |
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車の査定額によって必要な書類が異なるのですね。
共同相続に必要となる書類とは?
共同相続とは、複数の相続人が一緒に遺産を所有する状態を指します。故人の遺産は遺言などによって分割されますが、遺言書がない場合は相続人全員の話し合いによって遺産の分割を決めます。
遺産分割の話し合いが終了するまでは相続人全員で共有します。車は物理的に分割して所有できない財産であるため、売却するまでは共同相続となります。共同相続に必要な書類は次のとおりです。
共同相続に必要な書類 |
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共同相続の手続きでは、共同相続人全員の実印や印鑑証明などが必要となるため、書類の準備にも時間がかかります。相続人同士で協力して進めましょう。
相続人以外の第三者に譲渡するときは?
車を相続人以外の第三者に譲渡することも可能です。しかし、第三者に譲渡するためには、一度相続人へ名義変更してから第三者へ名義変更する必要があります。
この手続きで相続人が用意すべき書類は以下のとおりです。相続人全員が手続きする場合と、代表の相続人が手続きする場合とで必要な書類が異なるため、不備がないように注意しましょう。
相続人全員が 手続きをする場合 |
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代表相続人が 手続きを行う場合 |
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譲渡される第三者が準備するべき書類は、以下の3つです。
第三者が用意する書類 |
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車の持ち主が死亡したときに注意すべきポイント
車の持ち主が死亡したときの注意点を3つご紹介します。
車の名義人を確認する
車の持ち主が死亡したときには、車検証で名義人を確認しましょう。故人がよく乗っていたからといって、車の名義人が故人とは限りません。車の名義人と使用者は同一でなくても構わないからです。
そのため、車検証を確認すると故人の配偶者や子どもが名義人となっている可能性もあります。名義人が故人でなく、家族や親族である場合、名義変更の手続きは必要ありません。

まずは車検証で名義人を確認して、手続きが必要か確かめましょう。
名義をそのままにしておかない
車の持ち主が死亡して、車検証を確認した結果、名義人が故人であった場合は名義変更が必要です。名義変更をしなければ、車を売却したくてもできない、一時的に使用を停止する一時抹消登録や、廃車手続きができないなどのトラブルにつながる可能性があります。
また、故人名義の車を運転していて事故を起こしてしまった場合、自賠責保険以上の金額が補償されない可能性もあります。
名義変更は義務ではなく変更期限も設けられていませんが、名義変更を行わないと自分が損をする可能性があるため、必ず名義変更をしましょう。
自動車保険の手続きを忘れない
相続した車に乗り続ける場合は、自動車保険の名義変更も必要です。保険会社に連絡することで、名義変更に必要な書類や手続き方法を案内してもらえます。
自動車保険の名義変更をしていないと、事故を起こしたときに必要な補償を受けられなくなる可能性があるため注意しましょう。車の名義変更が済んでも、自動車保険の名義変更が完了するまでは車を運転しない方がよいでしょう。
また、名義変更の手続きをするときには契約内容を見直しましょう。誰が相続するかによって、等級の引継ぎの可否も決まります。免許証の色や相続人の年齢によって保険料が変わる可能性もあります。補償範囲や補償対象もあわせて見直しましょう。
名義変更前に査定してもらうメリット
車の名義変更をする前に査定してもらうことをおすすめします。名義変更前に査定してもらうことで、以下のようなメリットがあります。
車の価値を知ることで車への対応を考えられる
車を売却しようか、相続して乗り続けようか迷っている人も、まずは査定に出してみることをおすすめします。車の査定額が高ければ売却して新しい車の購入費に充てられます。査定額に納得できなければ、車を相続して名義変更し、大切に乗り続ける選択ができます。
誰が相続するかという話し合いも、相続人が車の価値を分かったうえでする方がスムーズに進められるでしょう。
査定してもらった結果、査定額に納得できずに乗り続けることを選択した場合でも、有料で名義変更手続きを代行してくれる業者もいるため、名義変更の負担を軽減できるメリットがあります。
買取業者が名義変更を代行してくれる
車を査定してもらい、納得のいく価格であれば売却することも可能です。ただし、故人の車を売却するためには名義人が手続きを行わなければならないため、名義変更が必要です。このとき、買取業者が名義変更手続きを代行してくれたり、名義変更で分からない部分を教えてくれたりする場合もあります。
売却も検討している人は、面倒な名義変更手続きをする前に車を査定してもらうことで、手続きの負担を軽減できます。
ローンが残っており、車の名義人がローン会社やディーラーになっている場合も、ローンの完済さえすれば買取業者がローン会社やディーラーとやり取りをして名義変更を代行してくれます。
まとめ
車の持ち主が死亡したときは、車の名義変更が必要です。名義変更には多くの書類が必要なため、手続きをめんどくさいと感じる人もいるでしょう。
しかし、名義変更をしなければ、車の売却や車の使用を一時停止する「一時抹消登録」、廃車手続きができない、事故を起こしたときに自賠責保険以上の金額が補償されないなどのトラブルにつながる可能性があります。
そのため、可能な限り早めに手続きすることが大切です。名義変更をする前に査定してもらうことで車の価値を把握できるだけでなく、名義変更手続きを代行してもらえるため、うまく活用して名義変更の負担を軽減しましょう。
車の持ち主が死亡したときの名義変更ってどうやればいいのですか?